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スーツ服地の研究(長大 共同開発服地)


 
□今回は国産服地
今年の秋冬物のスーツを作ろうと,8月下旬に,行きつけの銀座山形屋に行った。
 
担当の店員さんから提案された服地を見ていると,目が留まったものがあった。昨年のスキャバル・マジェスティックの記事で書いた,「長大株式会社との共同開発、銀座山形屋でのみ取り扱いする【国産最高峰の究極ファブリック:Super140’s リンクルケア】」である。
 
濃紺のシャドーストライプで艶もあり,私の好みに合ったことと,バンチ(服地見本)を触ると重くてしなやかであったことが印象に残った。バンチには,400g(1mあたり400g)と表記してある。最近は1mあたり320gや340gの服地でスーツを作っていたこともあり,今回はこれで3ピーススーツを作ることにした。
 
□昨年との相違点
長大株式会社は,紳士服地や婦人服地を製造しているメーカーで,紳士服地ではスーパーテックス(C.D.K.SUPER TEX)というブランド名を採用している。
 
長大株式会社と銀座山形屋の共同開発という触れ込みのこの服地は,Super140'sの原毛を使っているとの表記がある。一般的なウールの服地はSuper100's前後であり,細い(≒しなやかでデリケート)原毛を使っている。また,Super140'sは原毛1kgで140mの長さの糸を作れる(≒しなやかさがあり高品質)原毛が,少しでも混ざっていれば表記できる。つまり優良誤認じみた表記もできるが,長大株式会社や銀座山形屋が表記するからには,信用できる品質といえるだろう。
 
昨年もこの服地を見ていたが,今年は昨年に比べて2点違うことに気づいた。
(1) 昨年の服地は350gであったが,今年のは380gと400gの二種類がある。
(2) 380gのは柄が入っており,一般的な日本人が好む柄である。400gはシャドーストライプであり,スキャバルやテイラー&ロッヂなどで見かける色合いである。

なお昨年のも今年のも,ションヘル織機という昔ながらの低速織機で織っている(≒ふっくらとした風合いになる)。またリンクルケア(防シワ加工)が施されている。
 
ここからは推測になるが,昨年と同様にこれをお勧め服地として売り出していることから,2点推測できることがある。
(a) 昨年この共同開発の服地は売れたので,今年は拡充して売り出しているのではないか。
(b) お客から「もっと本格的な服地を」,「もっとワールドワイドなセンスの服地を」という要望が出たのではないか。
 

 
□本格的な冬物服地は厚くて重たい
スーツ服地は,とりわけ冬物は,服地に厚みがあり重たいのものが本格的とされている。仕立て映えするからである。仕立て映えとは,歩くときにきれいなドレープ(ゆらゆら揺らめくこと)が出る,織り目が密で表面が張った質感がする,長持ちする,などである。そのためミル(織物工場)やマーチャント(服地商社)では,近年の要望に応えて薄く軽めの冬物服地を出すとともに,従来からの厚く重めの冬物服地もラインナップに残している。この厚く重めの冬物服地の目安は,350gから400gになる。
 
昨年のものも350gと本格的な服地に入るものであったが,今年はより本格的に,一般的な日本人向けには380gのラインナップを,私のような物好きには400gのラインナップをと,拡充して二系列で出してきたように思われる。
 
余談だが,政治家の麻生太郎氏はスーツのパンツで,裾のダブルの折り返しのところに,重りを入れているそうである。これは麻生氏の英国趣味を取り上げた記事の受け売りだが,ドレープの美しさを出すには,重さが必要であることを感じているからだろう。スーパーマンやバットマンなどのスーパーヒーローのマントも,歩くたびに,あるいは風でたなびいてドレープが出ている。このドレープも,厚手の服地が使われており,ハリウッド映画らしく美しさが追求されている。
 
なお,重たい服地を使っていたら,スーツを重く感じるのではないかと思われるかもしれない。私の経験から,重さを含めたスーツの着心地は,フィッティングにより大きく変わる。オーダーメイドで作ったフィッティングの良いスーツは,上着の重さを上半身全体で受け止めるような感触で,あまり重たいとは感じない。またフィッティングの良いスーツは,体を動かしてもスムーズに動き,脇の下などが引っ張られる感触が少なく,長時間着ていても疲れる感じが少ない。
 

 
□着てみて
出来上がったスーツを試着してみた。最初の感想は,「あっ,昔のスーツの感触だ。」である。昔の冬物スーツは,350gから400gの服地が多かったからである。
 
近年は暖房が行き届いたことと,スーツに軽快さが求められるようになってきたこともあり,冬物服地といっても300gから350gあたりのものが多くなってきた。その範囲内の服地で作った冬物スーツに袖を通すと,拍子抜けするくらいに薄くて軽い印象をもつこともある。
 
Super140'sの原毛を使って何番手の糸に紡績したのかはわからないが,目視で織り目が見えないことと,しなやかな感触から,高番手の細い糸に紡績したようである。また,ふっくらとした質感で,艶がある。
 
昔からの厚さと重さがあり,しかもざっくりとした質感ではなく艶がある。400gクラスと限定すれば,こんな服地は他ではないと感じる。
 

 

 
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