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スーツ服地の研究(ドーメル 別注)


 
この服地(生地)は,私の行きつけのテーラーである(株主でもある)銀座山形屋の創業100年記念で,ドーメルに別注されたものである。銀座山形屋は,ビートルズが来日したときはポールマッカートニーが評判を聞いて,スーツをオーダーしたほどの老舗で,しかも仕立てのセンスは若々しく,勤め人でも手の届く価格帯のものも力を入れているのが特徴である。
 
別注服地の場合,既存のラインナップのどれかを選んで,新しい色柄を開発したり,過去に評判のよかったものを復刻したものが多い。一から開発した服地もなくはないが,創業××周年記念のような記念物の場合は,実績を重視するため考えにくい。
 
この別注服地は,同じドーメルのアマデウス(1mあたり310g)よりも重く,1mあたり300g台の後半あたりに感じる。ドーメルの服地のラインナップで,アマデウスよりも重たく,なおかつウール100%で,ツイードなどではないオーソドックスなコレクションとなると,ロイヤル12というコレクションしかない。
 
こういう記事では推定はあまり適さないが,ロイヤル12特有の織り目がはっきり見える表面であることと,ロイヤル12で過去に仕立てたことがあって同じであることを実感しているので,今回はロイヤル12の服地として書き進めていく。
 

 
ドーメルのロイヤル12(ロイヤル トゥエルブ)は,ドーメル社の資料によると,1mあたり12オンス(370g)のウール100%で,サビルロー番手とよばれる2/52×2/52(52番手の太い糸を2本撚り合わせた双糸を,縦糸と緯糸の両方に採用している)の糸使いで織っているそうである。オーソドックスな色柄で,ウーステッドスーツのメインストリームともいえるコレクションである。今回はグレーの無地で,スクエアショルダーの英国スタイルでオーダーした。
 
出来上がったスーツは,表面がパンと張った感じで,着て歩くと,軽々しくないドレープ感(ゆらゆら揺れる感触)が出る。3年経ってからでも,スチームをあてると,新品に近い状態にまで復元する。見事な質感である。過去にロイヤル12を仕立てたことがあるが,この質感を忘れていて,表面の張りが違うが今回は芯地を変えたのかと,店の人に聞いたくらいである。
 
張りのある服地を楽しむには,ある程度の目付け(重さ)と,糸の太さが必要である。最近は技術の進歩と温暖化の影響があるのか,軽い目付けや細い糸で織った服地が流行である。それはそれで着やすいが,表面がパンと張った質感や,軽々しくないドレープ感を楽しむのも,スーツの楽しみであるだろう。このロイヤル12は,英国服地の神髄ではないかと感じた。色違いで,もう一着オーダーしたほどである。
 

 

 
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