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食べるということ


 
 
海沿いの街で生まれ育ったせいか,好物には海の幸が多い。海のイメージというと人により異なるだろうが,私にとっての海は堤防と砂浜が続いていて,時々魚やわかめの腐ったにおいが漂ってくる空間である。値段に関係なく好きなのは,焼きいか,焼きはまぐり,海老の刺身,かになどである。いかやはまぐりは焼いて醤油をかけただけのものが最高だし,かにも三杯酢は不要で,塩ゆでしただけのものが一番おいしいと思う。
 
海の幸以外では,焼き肉が好きだ。ロースやハラミではなく,内臓に関わる部分が,エキスを豊富に含んでいるような感じがする。香ばしさが出てくる程度に焼いて,それに最小限のタレを付けて味を調え,ほおばるようにしている。
 
手の込んだ調理を施した食べ物も鑑賞に値すると思うが,焼くぐらいで素材の味わいを極力保ったままの食べ物の方が,食べた時の満足感が違うのである。その満足感は,体に必要な栄養を摂取しているからだろうと長年思ってきたが,ある時,もっと根源的な感情なのではないかと気が付いた。それは,他の生命を自分に取り込む快感である。
 
人間に限らず生き物は,他の植物や動物を食べて生命を維持している。生きている限り繰り返されるその行為には,空腹だから食物を欲するという食欲以前に,生き物として刷り込まれている本能が存在していると思うのである。そして工業製品として生産された食品よりも,生きたものを最小限の調理で食べることは,その快感がよりストレートに味わえるからではないか,結論としてそう感じるのである。
 

 
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