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腕時計


 
高校を卒業した頃から,人生の転機というか生活が変わる時期に,腕時計を買い足すようにしている。腕時計を換えると,気分も新たになるからである。腕時計の中でも好きなのが,ストップウォッチ機構を内蔵したクロノグラフと,秒針のないドレスウォッチである。クロノグラフは,もともと私は精密感のある機械が好みで,文字盤に小さなメータが並んでいるのが好みであるからだ。秒針のない時計は,あわただしく生活する人間を対象として作られてはいないが,だからこそ持ってみたくなる。人間にとって共通な望みは,現在とは異なる人生を過ごすことであるが,わずかにせよその気分を味合わせてくれるからだ。
 
学生時代には,安価なものをいくつか買い揃えて,傷を付けてもかまわないもの,着ている服に合うものなど,TPOで換えていた。社会人になってからは,ホイヤー(当時はタグ・ダージェントと合併する前)のクロノグラフにした。20代の活動的な男にとって,ダイバーウォッチで老舗のモデルが,ふさわしいように感じたからだ。そのためクロノグラフで,スーツにも合うモデルを折を見て探した。国産の腕時計にはない,歴史的な深みを感じさせるデザインがよかったが,大きいためシャツの袖口がすり切れるのがご愛嬌であった。
 
今は,仕事で身につける腕時計としてロレックスが多い。一度は身につけてみたいと思って買ったが,ベルトが曲がるときのしなり具合や,時刻を調整するときの針の動きで,精度感と剛性感の高いフィールが気に入っている。自動車やカメラもそうであるが,私は高い精度と剛性をもった機械が好きである。がっしりした鋼鉄の部品が,力の加わりに応じてわずかにしなりながらもスムーズに動く,その感触が何ともいえず心地よく,かつ質感を感じるからである。選んだモデルはクロノグラフではなく,スタンダードな良さがあって,金無垢のモデルのように反感を買うこともない,ステンレスケースのデイトジャストである。
 
もっとも,オフタイムでは腕時計は身につけない。オンタイムでもキーボードを打つ場合は,引っかかるのではずすようにしている。時刻は携帯電話で分かるし,腕にとってもともと邪魔な存在だからだ。アクセサリとして身につける人も多いだろうが,私にとって腕時計は,服装同様に気分を変える効果のある機能部品であるからだ。
 
これから欲しいモデルとして,オーデマ・ピゲというメーカーの,ロイヤルオークというシリーズがある。メタルバンドと防水機構で日常の使用に適しており,ロレックスにない美しさがあるからだ。しかし,現在でも無理すれば買えないことはないが,少なくとも今の自分には似合わない。それにふさわしい人間になったと自分で感じた時に,買いに行こうと思っている。
 

 
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