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平成18年度秋期 午後問3(投資の可否の判定)


 
問3 新規システムの導入における投資の可否の判定に関する次の記述を読んで,設問1,2に答えよ。
 
 K社では,IP電話機器及び関連システム(以下,IPCシステムという)の導入に関して,初期投資額,維持費用及び見込まれる効果額について検討し,投資の可否を判定することにした。
 
(1)  初期投資額
表1に,IPCシステムの導入に必要な初期投資額を示す。
 
表1 IPCシステムの導入に必要な初期投資額 単位 千円
費目 内容 初期投資額
IP電話機器取得費 IP電話機,IP電話交換機など 8,000
LAN機器取得費 音声優先制御スイッチ,給電型スイッチングハブなど 7,000
ソフトウェア購入費 ボイスメールソフト,自動応答ソフト 5,000
 
(2)  維持費用
〔1〕  機器保守費
 IPCシステムの稼働後,1年目は発生しない。2〜4年目は機器取得費の10%,5年目以降は機器取得費の20%が,それぞれ毎年発生する。
ということは,後で出てくる図のワークシートで,1年目の機器保守費が入るセルC8には数値の0を入れる。また2年目の機器保守費が入るセルD8は,3〜6年目のセルにも複写して使うため,2〜4年目の10%での算出式と,5年目以降の20%での算出式をIF関数で分けて実行する式を入れて,どちらにも対応できるようにする。
〔2〕  ソフトウェア維持費
 IPCシステムの稼働後,毎年ソフトウェア購入費の12%が発生する。
ということはワークシートで,1〜6年目のソフトウェア維持費はどれも同じで,ソフトウェア購入費に0.12をかけた数値になる。
(3)  見込まれる効果額
〔1〕  通信費の削減額
 IPCシステムの導入前には,年間の通信費が4,000千円であった。通信料単価の低価格化が進んでいるので,IPCシステムを導入しなくても毎年,対前年比10%の減少が見込まれている。IPCシステムを導入することによって,1年目以降は,毎年見込まれている通信費を更に40%削減できる。
ということは,当初見込まれている通信費は,2年目は1年目の90%であり,3年目は2年目の90%になる。4〜6年目も同様。
〔2〕  電話交換機の管理費の削減額
 既存の電話交換機は,年間の管理費が1,500千円である。IP電話交換機を導入した場合には,既存の電話交換機に比べて,年間の管理費を50%削減できる。
ということは,1〜6年目の管理費はどれも同じで,既存の電話交換機の管理費に0.5をかけた数値になる。
〔3〕  省力化による費用の削減額
 ボイスメールソフトによって伝言メモの作成が不要となり,自動応答ソフトによって代表電話の受付業務が廃止される。これらの省力化によって,IPCシステムの稼働後,年間の費用を4,000千円削減できる。
ということは,1〜6年目の省力化による費用の削減額は,いずれも4,000になる。
(4)  投資の可否の判定基準
 次の二つの判定値が投資の判定基準を満たしているとき,投資が可能であると判定する。
〔1〕  回収期間判定値
 回収期間判定値とは,毎年見込まれる年間の効果額から年間の維持費用を引いた値(以下,増分キャッシュフローという)の累計から初期投資額を引いた値のことである。回収期間判定値がプラスに転じるまでの期間が,IPCシステムの稼働後6年以内であれば,投資の可否の判定基準を満たしているといえる。
増分キャッシュフローは,見込まれる効果額の計から,維持費用の計を引いたものになる。ワークシートでは,セルC15からセルC10を引いて求める式が,セルC16に入る。
〔2〕  採算判定値
 採算判定値とは,増分キャッシュフローから投資の減価償却費(以下,償却費という)の合計を引いた値のことである。採算判定値がIPCシステムの稼働後6年目までプラスならば,投資の可否の判定基準を満たしているといえる。
採算判定値は,増分キャッシュフローから償却費計を引いて求める。ワークシートでは,セルC16からセルC24を引いて求める式が,セルC25に入る。
 表2に,償却の対象ごとの耐用年数,償却率,償却方式,及び償却費の計算式を示す。
 
表2 償却の対象ごとの耐用年数,償却率,償却方式,及び償却費の計算式
償却の対象 耐用年数(年) 償却率 償却方式 償却費の計算式
IP電話機器 6 0.319 定率法 未償却残高=取得価額−償却累計額
償却費=未償却残高×償却率
LAN機器 10 0.206
ソフトウェア 5 0.200 定額法 償却費=取得価額×償却率
 
(5)  投資の可否を判定するためのワークシート
 IPCシステムの導入における投資の可否を判定するために,表計算ソフトを使って,図に示すようなワークシートを作成した。
 
図 IPCシステムの導入における投資の可否を判定するためのワークシート
 

 
設問1 図のワークシートに関する次の記述中の[  ]に入れる適切な字句を,解答群の中から選べ。
 
(1)  行3〜5に,投資の可否を判定するための前提条件として,初期投資額,償却費の計算,及び導入前の年間の費用と効果額を入力した。
(2)  セルD8に,2年目以降の機器保守費を求める計算式“[  a  ]”を入力して,セルE8〜H8に複写した。セルC9に,1年目のソフトウェア維持費を求める計算式“[  b  ]*0.12”を入力して,セルD9〜H9に複写した。
aでは,aに関する解答群を見てみよう。2〜4年目では0.1をかけ,5年目以降は0.2をかけるようにIF関数で処理を分けた式が該当する。
bでは,セルC5のソフトウェア購入費に0.12を掛け合わせて求める式が入る。0.12の数値が入っているセルはないので,ここでは式の中に0.12を入れている。
(3)  セルC11に,1年目の当初見込まれる通信費を入力した。セルD11に,2年目の当初見込まれる通信費を求める計算式“[  c  ]*0.9”を入力して,セルE11〜H11に複写した。セルC12〜H12に各経過年度の通信費の削減額を求める計算式,セルC13〜H13に各経過年度の電話交換機の管理費の削減額を求める計算式,セルC14〜H14に各経過年度の省力化による費用の削減額を求める計算式を入力した。
当初見込まれている通信費は,2年目の値は1年目のそれに0.9をかけて求め,3年目の値は2年目の値に0.9をかけて求める。そのためセルC11〜H11に入れる式は,前の年に0.9をかける式になる。セル参照は相対参照にして,式を複写したら参照先が変わっていくようにする。
(4)  セルC16〜H16に,各経過年度の増分キャッシュフローを求める計算式を入力した。セルC17に,1年目の増分キャッシュフローの累計を求める計算式を入力した。セルD17に,2年目の増分キャッシュフローの累計を求める計算式“[  d  ]”を入力して,セルE17〜H17に複写した。セルC18〜H18に,各経過年度の回収期間判定値を求める計算式を入力した。
2年目以降の増分キャッシュフローの累計は,前年の増分キャッシュフローの累計に,今年の増分キャッシュフローを加えた値になる。
(5)  セルC19に1年目のIP電話機器の未償却残高を求める計算式を入力し,セルC20に1年目のIP電話機器の償却費を求める計算式を入力した。セルD19に,2年目のIP電話機器の未償却残高を求める計算式“C19−D20”を入力して,セルE19〜H19に複写した。セルD20に,2年目のIP電話機器の償却費を求める計算式“C19*$F3”を入力して,セルE20〜H20に複写した。セルC21〜H21に各経過年度のLAN機器の未償却残高を求める計算式,セルC22〜H22に各経過年度のLAN機器の償却費を求める計算式を入力した。セルC23に,1年目のソフトウェアの償却費を求める計算式“[  e  ]”を入力して,セルD23〜G23に複写した。セルC25〜H25に,各経過年度の採算判定値を求める計算式を入力した。
ソフトウェア購入費は定額法による減価償却なので,毎年同じ額を償却する。つまり,セルC23〜G23には同じ値が入る。それはソフトウェア購入費に償却率をかけ合わせた値になる。また5年で償却するので,6年目のセルH23は,償却済みで0となる。
 
aに関する解答群
 (C3+C4)*0.1
 (C3+C4)*0.2
 ($C3+$C4)*0.1
 ($C3+$C4)*0.2
 IF(D7≧5,($C3+$C4)*0.2,($C3+$C4)*0.1)
 IF(D7<5,($C3+$C4)*0.2,($C3+$C4)*0.1)
 
b,cに関する解答群
ア C5 イ C11 ウ I3 エ $C5 オ $C11 カ $I3
 
dに関する解答群
ア C16+D16 イ C17 ウ C17+D16 エ E17−E16
 
eに関する解答群
ア C5*F4 イ C5*F5 ウ $C5*$F4 エ $C5*$F5
 

設問1 a:オ,b:エ,c:イ,d:ウ,e:エ
a  2年目以降の機器保守費を求めます。機器保守費は,稼働後1年目は発生せず0で,2〜4年目は機器取得費の10%,5年目以降は機器取得費の20%になります。セルC8にはあらかじめ0が入っているので,2〜4年目と5年目以降で計算式を分けます。稼働後の年数は7行目の経過年度を使い,機器保守費はセルC3とセルC4を合わせた値になります。したがって,セルD7の値が4以下であればセルC3とセルC4を合わせた値に0.1をかけ,5以上であればC3とセルC4を合わせた値に0.2をかけます。ところでこの式を,同じ行の別の列にも複写しますから,セルC3とセルC4の参照が変わらないよう列を絶対参照にして,$C3+$C4とします。解答群では,5以上と5未満に分けて式を記述した,オが同じ処理を行っているので該当します。
b  1年目のソフトウェア維持費を求めます。1年目に限らずソフトウェア購入費の12%ですから,ソフトウェア購入費が入っているセルC5の値に0.12をかけて求めます。ところで,この式を同じ行の他の列にも複写しますから,参照が変わらないよう列を絶対参照にします。そのため,$C5になります。
c  1年目の当初見込まれる通信費を求めます。これはIPCシステムを導入しなくても毎年10%の減少が見込まれる額であり,IPCシステムの導入で40%削減した額ではありません。したがって,前年度の当初見込まれる通信費であるセルC11に,0.9をかけて求めます。またこのセル参照は,複写にともなって変わりますので相対参照とします。したがって,C11になります。
d  2年目の増分キャッシュフローの累計を求めます。これは前年度の増分キャッシュフローの累計に,今年度の増分キャッシュフローを加えたものになります。またこのセル参照は,複写にともなって変わりますので相対参照とします。したがって,C17+D16です。
e  1年目のソフトウェア償却費を求めます。これは表2より定額法で,5年で償却しますからソフトウェア購入費を,5で割って求めるか,償却率(0.2)をかけて求めます。償却率はセルF5にあるので後者の式を使い,C5*F5とします。ところでこの式を,同じ行の別の列にも複写しますから,セルC5とセルF5の参照が変わらないよう列を絶対参照にして,$C5*$F5になります。

 
設問2 図のワークシートの結果から明らかとなる投資の可否の判定に関する記述として適切なものを,解答群の中から選べ。
図のワークシートをMicrosoft Excelで作成している。それを開いて確認してみよう。
図のワークシート(062pmex3.xls)
なおMicrosoft Excelがなくても,他の表計算ソフト(xls形式のワークシートに対応したもの)で開くことができる。無料の,表計算ソフトを含んだオフィスソフトもある。
無料のオフィスソフト(OpenOffice日本ユーザ会)
 
解答群
 回収期間判定値及び採算判定値とも,投資の可否の判定基準を満たしていない。
 回収期間判定値及び採算判定値とも,投資の可否の判定基準を満たしている。
 回収期間判定値は投資の可否の判定基準を満たしていないが,採算判定値は投資の可否の判定基準を満たしている。
 回収期間判定値は投資の可否の判定基準を満たしているが,採算判定値は投資の可否の判定基準を満たしていない。
 回収期間判定値又は採算判定値が,投資の可否の判定基準を満たしているかどうかは判定できない。
 

設問2 エ
 回収期間判定値は,増分キャッシュフローの累計から初期投資額を引いた値が,6年以内にプラスに転じていたら,投資の可否の判定基準を満たしています。回収期間判定値を順に求めていくと,
 1年目の回収期間判定値=5,590−20,000=−14,410
 2年目の回収期間判定値=(5,590+3,946)−20,000=9,536−20,000=−10,464
 3年目の回収期間判定値=(9,536+3,816)−20,000=13,352−20,000=−6,648
 4年目の回収期間判定値=(13,352+3,700)−20,000=17,052−20,000=−2,948
 5年目の回収期間判定値=(17,052+2,095)−20,000=19,147−20,000=−853
 6年目の回収期間判定値=(19,147+2,000)−20,000=21,147−20,000=+1,147
で,6年目でプラスに転じているので,投資の可否の判定基準を満たしています。
 
 採算判定値は,各年度の増分キャッシュフローから償却費計を引いた値が,1〜6年目までプラスであれば,投資の可否の判定基準を満たしています。したがって,
 1年目の採算判定値=5,590−4,994=596
 2年目の採算判定値=3,946−3,883=63
 3年目の採算判定値=3,816−3,093=723
 4年目の採算判定値=3,700−2,528=1,172
 5年目の採算判定値=2,095−2,122=−27
 6年目の採算判定値=2,000−829=1,171
で,5年目がプラスでないので,投資の可否の判定基準を満たしていません。

 
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