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情報セキュアド 平成14年度試験 問題(午後2 問2)
問2 情報システムセキュリティの監査に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。
X社は,中規模の部品製造会社である。X社のもつ部品製造技術には定評があり,全世界の装置ベンダから部品の製造注文がある。X社は,2001年に米国の大手装置ベンダであるY社と次世代の情報通信用装置の部品開発に関して提携を結んだ。総勢30名の特別プロジェクトチーム(以下,PTという)を組織編成し,開発を進めている。Y社側もPTを組織編成している(図1)。X社PTでは,設計システムを利用して部品のプロトタイプを製作している。両PTは,設計のために,電子媒体を含むお互いの文書類を参照している。X社PTのLANは,VPNでY社PTのLANと接続されている(図2)。PTのメンバと特別に許可された者だけが,特別プロジェクト棟に入棟できる。
この開発は,全世界の競争相手から注目されているので,両社とも開発に関する情報セキュリティの確保には細心の注意を払っている。
ところが,開発の内容の一部が,X社側から漏えいしたのではないかとの疑いが持ち上がった。そこで,両社は,PTの情報セキュリティを見直すことにした。早速,情報セキュリティを高めるために,X社PTの情報システムのセキュリティに関するシステム監査(以下,監査という)を実施することが,Y社から提案された。
X社の社長は,監査が将来的な情報セキュリティの向上に役立つと考え,提案を受諾した。監査チームが,Y社監査部のJ部長をリーダとし,X社監査部のT課長及びY社監査部のL専門担当者で構成された。監査チームは,X社PTに対する監査基本方針(図3)を作成し,X社側被監査部門の責任者である情報システム部のD課長に必要書類の提供を求めた。
図3 X社PTに対する監査基本方針
1. 監査は,X社PTにかかわる情報セキュリティの管理状況を点検,評価し,併せて関係者の情報セキュリティ意識を高めることを目的にする。 2. 監査の対象は,X社PTの設計業務及び入退室管理とする。また,文書管理も監査の対象とする。 3. 監査は,X社の情報セキュリティ基本方針を基に,対策基準が適切かどうか,対策基準に対応する実施規定が作成されているかどうか,実施規定がX社PTで適切に実施されているかどうかについて行う。 4. 監査は,チェックリストを基に,現場立入調査,各種ログ分析及びヒアリングによって行うものとする。
〔監査に向けた準備〕
D課長は,監査チームに,X社のネットワーク構成図,組織図,“情報セキュリティ基本方針,対策基準”(図4)及びX社PTに関する実施規定(図5)を提出した。D課長は,“情報セキュリティ基本方針,対策基準”の制定経緯について,次のように説明した。
“情報セキュリティ基本方針,対策基準”は,X社の情報セキュリティ委員会で策定され,1998年に経営会議で承認されて,社員(出向者,外注者,派遣者を含む)に通知された。また,X社PTに関する実施規定は,X社の技術開発部長と情報システム部長によってY社のCSOの助言を受けて作成されPT発足時に関係者に通知された。
図4 情報セキュリティ基本方針,対策基準 情報セキュリティ基本方針,対策基準
X社社長
I.基本方針
X社は,最先端の研究成果を部品開発に生かす企業である。そのため,研究や開発に関する情報セキュリティの確保は,最も重要な経営課題である。社員は,必要の原則(need to know)に従って,情報セキュリティを常に意識して行動しなければならない。
II.組織と役割
社長を最高責任者とし,各部長をメンバとする情報セキュリティ委員会を組織する。情報システム部長を実施責任者にする。各部に,情報セキュリティ管理者とネットワーク管理者を置く。
各部の情報セキュリティ管理者は,部長の指示に従い,基本方針,対策基準の実施,情報資産の管理及び必要の原則に基づいたアクセス権の付与に責任をもつ。各部のネットワーク管理者は,各種サーバ及びネットワークの管理業務を実施する。この際,情報セキュリティ管理者が立ち会う。
III.対策基準
1. 適用範囲
(1) 本基準は,すべての社員に適用される。 (2) 本基準は,X社が保有するすべての情報資産に適用される。 2. 情報資産管理
(1) X社の管理する情報資産には,その重要度が高い順にA〜Dのランクをつける。部品開発に関する情報資産は,ランクAとして扱われる。 (2) ランクAの情報資産を扱う場合には,会社が支給するパソコンやフロッピーディスクなどにデータを保存してはならず,すべて特定のデータベースに格納する。 (3) ランクAの情報資産をプリント出力し,又は社外に持ち出すときには,所属部長の許可を得る。 (4) (以下,ランクB〜Dの情報資産の取扱いは省略) 3. 利用手続
社員は,ネットワークやデータベースを新たに利用する場合や利用条件を変更する場合,所属部長による必要の原則に基づく審査を経て,承認を受ける。承認後,ネットワーク管理者が情報セキュリティ管理者の立会いの下でアクセス権を設定する。4. 入退室管理
就業規則を適用する。
5. 運用保守
サーバ,ネットワーク機器及びデータベースは,物理的に隔離された部屋に設置する。ネットワーク管理者,情報セキュリティ管理者及び情報セキュリティ委員会が許可した者(メーカ作業者など)だけが入室し,設定や変更を行うことができる。
障害修理やメンテナンスを行った場合,ネットワーク管理者は,情報システム部長に作業記録を提出する。
6. インターネットの利用
インターネットの利用は,ランクAの情報資産が流出するリスクがある場合を除き,許可する。利用者は,所属部長に申請して許可を受ける。
7. パソコン管理
(1) パソコンの設定,ネットワークヘの接続,廃棄,修理及び展示やデモによる一時持ち出しは,ネットワーク管理者が情報セキュリティ管理者の立会いの下で行う。 (2) 社員は,パソコンのウイルス対策を適切に行う。 8. 記憶媒体管理
社員は,パソコンのハードディスク,フロッピーディスクなどの記憶媒体を,その取得から廃棄までのライフサイクルの各段階において,適切に管理する。また,情報セキュリティ管理者にライフサイクルの各段階での記録を逐次提出する。
9. 例外管理,セキュリティ事故への対応
(省略)
10. 教育訓練
社員は,定期的に情報セキュリティの教育訓練を受ける。
11. 監査
定期的に監査を行う。
12. 罰則
本基準に違反した社員は,就業規則に従って懲戒処分を受ける。
以上
図5 X社PTに関する実施規定 X社PTに関する実施規定
X社技術開発部,情報システム部
1. X社PTのメンバは,パソコンからX社及びY社PTにかかわる文書管理サーバ,データベースサーバに必要の原則の範囲内でアクセスできる。 2. X社PTにおける部品開発関連の情報資産は,すべてランクAとして扱う。 3. 特別プロジェクト棟における情報のプリント出力は,技術開発部長の許可を得た後,情報セキュリティ管理者の立会いの下で,特定のパソコンから行い,必要事項を〔1〕記録簿に記載する。 4. 技術開発部長は,X社PTの[ ア ]を定期的に提出させ,チェックする。 5. 〔2〕特別プロジェクト棟におけるインターネットの利用を禁ずる。 以上
〔監査の実施〕
監査チームは,情報セキュリティ対策基準などの書類をチェックし,現行の運用状況についてヒアリングを行った。続いて,表1に示す監査チェックリストを作成し,現場立入調査を実施した。
表1 監査チェックリスト 管理区分 コントロールの内容 確認する内容,文法の一例 情報資産管理
・ 情報資産のランク分け
・ X社PTの管理する情報資産は,文書,記憶媒体を問わず,ランクA〜Dに適正にランク分けされ,記録されていることを確認 入退室管理
・ 身分証を兼用するICカードによる入退室のコントロール
・ X社PTのメンバとそれ以外の社員のICカードで入退室を行い,メンバ以外の社員の入退室拒否を確認
・ 上記の結果をログで確認 ネットワーク機器管理
・ ネットワーク構成のコントロール
・ 実際の機器(メールサーバ,VPNルータなど)の設置,配線状態の確認
・ ネットワーク運用体制のコントロール
・ アクセスログと作業記録が[ a ]することを確認 パソコン管理
・ 業務終了時のファイルのコントロール
・ ランダムに選択したパソコンに[ b ]が残っていないことを確認
・ ウイルス対策
・ ランダムに選択したパソコンにウイルス対策ソフトがインストールされていることを確認
・ ライフサイクルのコントロール
・ パソコンの管理番号から購入記録,構成の変更記録及び[ c ]を確認 記憶媒体管理
・ ライフサイクルのコントロール
・ 記憶媒体の購入記録や[ c ]を確認 文書管理サーバヘのアクセス管理
・ 文書(VPNを介してのY社文書を含む)へのアクセスコントロール
・ X社PTのメンバからランダムに選択して,[ d ]を確認
・ X社PTのメンバ以外の社員のアクセス拒否を確認
・ 上記の結果のアクセスログを確認 ネットワーク利用に関するアカウント,パスワード管理
・ X社PTのメンバのアカウントパスワードのコントロール X社PTのメンバからランダムに選択して,
・ 当該者のアカウントとログインの成功,失敗がアクセスログに記録されていることを確認
・ 当該者がX社PTに異動してきたときの[ e ]を確認
・ パソコンからのアクセスコントロール
・ パソコンからパスワードなしにネットワークにログインできないことを確認
監査チームは,表1を基にした現場立入調査で,入退室管理以外の項目についてコントロールが適切であることを確認した。
入退室管理については,D課長に次のような説明を受けた。X社では,入退室管理にICカードを用いている。このICカードは,身分証及び社員食堂での支払手段を兼ねており,写真,氏名,生年月日,会社名及び所属が印刷されている。表2は,D課長が,入退室管理について監査チームに説明したときの資料である。
表2 入退室管理の概要 項目 内容 入退室管理規則 就業規則を適用 運用管理体制 ICカードでの無人管理とログによるチェック 入退室方法 ICカードをリーダに読ませ,社員番号を基に入室権限をチェックし,ドアを開閉 ICカードの記録項目 氏名,生年月日,社員番号,会社名,所属 ICカードのデータ書込手順 所属部長が承認
ネットワーク管理者による情報セキュリティ管理者の立会いの下でのICカードヘのデータ書込み
〔ヒアリングと意見交換〕
監査チームは,X社PTのネットワーク管理者と情報セキュリティ管理者に対して,日常の業務内容と報告のフローについてヒアリングを行った。
監査チームは,その結果を基に,ネットワーク管理業務に関する仕事の引継ぎの容易さからネットワーク管理者の間でアカウントが共通に用いられていること,ネットワーク監視業務などでは情報セキュリティ管理者が立ち会わないときがあることについて,説明を求めた。D課長は,後者について,操作結果がすべて該当サーバのログに記録され,定期的に情報セキュリティ管理者がチェックを行っているので問題はないと主張した。監査チームは,該当サーバのログをチェックするだけでも不正な行動を間接的に防止できることから,現状の管理体制でも十分であると結論づけた。
〔監査の結果報告〕
監査チームは,図6に示す監査報告書をまとめ,X社の情報セキュリティ委員会で社長に報告し,監査を終えた。
図6 監査報告書(抜粋) 監査報告書
監査チーム
1.総合評価
特別プロジェクト棟内に設置されているネットワーク,システム及びデータベースに関する情報セキュリティ対策基準,実施規定はおおむね適切であり,実際の運用もこれを遵守していると判断する。
(途中省略)
3.指摘事項
(1) 身分証とは別に入退室専用のICカードを作成して携帯させる必要がある。さらに,特別プロジェクト棟への入退室管理を強化するための追加手段が必要である。 (2) ネットワーク管理者のアカウントを個人別にすべきである。 (3) 対策基準では,ランクAの情報資産が流出するリスクが残る。 以上
〔監査のフォローアップ〕
X社の社長は,情報セキュリティポリシの重要性を再認識した。そこで,監査報告書の指摘事項に基づいてX社の情報セキュリティ対策を強化したいと考え,情報セキュリティ委員会に対して,“情報セキュリティ基本方針,対策基準”の見直しを指示した。
設問1 表1中の[ a ]〜[ e ]に入れる適切な字句を答えよ。
(1) [ a ]については,5字以内で述べよ。 (2) [ b ],[ c ]については,それぞれ9字以内で述べよ。 (3) [ d ],[ e ]については,それぞれ25字以内で述べよ。
設問1の正解例と解説へ
設問2 図5のX社PTに対する実施規定に関する次の問いに答えよ。
(1) 下線〔1〕の記録簿には,どのような項目を記録すればよいか。5項目以上挙げ,45字以内で述べよ。 (2) 図5中の[ ア ]に入れる適切な字句を,25字以内で述べよ。 (3) 下線〔2〕で,“特別プロジェクト棟におけるインターネットの利用を禁ずる”理由を,“情報セキュリティ基本方針,対策基準”との関係から,50字以内で述べよ。
設問2の正解例と解説へ
設問3 図6中の指摘事項に関する次の問いに答えよ。
(1) 監査チームが指摘事項の(1)で想定しているICカードに関するリスクを,65字以内で述べよ。また,指摘している追加手段を,25字以内で述べよ。 (2) 監査チームが指摘事項の(2)で指摘しているように,複数のネットワーク管理者が同じアカウントを用いてネットワーク管理業務を行う場合,どのような問題が発生するか。50字以内で述べよ。
設問3の正解例と解説へ
設問4 図6中の指摘事項の(3)で指摘されていることが,X社の情報の漏えいにつながったと考えられる。情報の漏えいに関連するリスクをもたらす規定上の不備は何か。30字以内で述べよ。また,図4中の対策基準に追加すべき防止策を,65字以内で述べよ。
設問4の正解例と解説へ
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